機関士のころ・天皇陛下のお召し列車



昭和23年、お召し列車をつくった。

120〜130人くらいワシの下にいた。


何十人も何ヶ月もかっかて、
あの油だらけの機関車を磨きあげる。
ワイシャツが当たっても汚れんようになるまで。


そりゃあすごいんど。おもしれんど。

連結機でもまっ茶じゃろ、あれでもみがきあげて地金を出す。
金色に光る。


そこまで磨きあげる、もう拝みょうるくらい。


「あなたは戦災にあわれましたか?」

「いいえ、あってません」

「それはよかったねえ。」

ひとくち言うただけじゃった。


ワシの三人横にいた人にそう話しかけた。

ワシは天皇もくそもありゃあせん、
そうゆうて脚を広げとった。


”テンノーヘイカ”、その言葉を聞いただで脚がピタッ、
昔から軍隊教育を受けとったけえ。


脚がひとりでに閉じとった、かかとが合うとった。ワシャ一人で笑ぉた。

 













金浦座ものがたり



作成・2005年7月24日  追加更新・2005年7月30日