闇夜の攻撃で海をさまよう


竹原へ行くのに1週間くらいもかかった。(普通、船で2〜3時間の距離)
あとから考えれば、あれはスパイがおった。おったんじゃ。


三津浜の港でのう、海軍の輸送艇に乗って。
ドンゴロスを大きくしたごついもんに衣装・持ち物をみな入れて、軍刀もいれて。海軍の軍刀は短いんじゃ。

朝暗い間に起こされて、何時かわからんのじゃ。
三津浜をでて20分くらいした頃。

”ぶ〜〜ん”と音がして。
ばりバリばりバリ!!!!・・・と、一機か二機か?それもわからん。攻撃されてのう。
スパイがおったんじゃ・・それで港に戻った。

三津浜の港のそばに「愛媛県のじょししゃ」いう建物があって、そこに泊まっとった。
それでまた、夜中に起こされて。
それから・・・。

もう三回目の時じゃったと思うが。その時も夜中に起こされて。
船で行きょうた。
またやられた。
今度は船が動かんようになった。もう荷物も捨ててのう

もう朝が明けとった。島から200〜300メートル離れとった。遠浅じゃった、脚が足りたり足らなんだり。「お〜い、脚が足りるどー。」
ようたが波がくれば隠れる、それで泳いだりしながら島に着いた。


その島に着いて山越えをしたら集落があった。「中島」らしい。


数年前に予科練の会合で「中島におった人はいるか?」いわれ「ワシも」「ワシも」と手をあげるんで、その時はじめて「中島」じゃったことを知った。
中島には何人くらいおったのか思い出せん。


二晩、そこにおった。







2003年3月19日