「8時15分-原子爆弾投下。43秒後にセン光衝撃で機体傾。……巨大な原子雲」
「9時-雲が見える。高さ1万2千メートル以上」-原爆投下機エノラ・ゲイの
乗員の1人が記したあの瞬間の航空日誌である。

 真夏の太陽を受けて不気味に光る“巨大な原子雲”の下に、核時代の原点と
なったヒロシマがある。暗い影を落としながら、北西に向かって広がるキノコ
雲。“黒い雨”を呼んだあの雲。30万とも40万ともいわれる広島市民のうめ
き声が、キノコ雲の下にある。

 広島原爆投下作戦に参加したB29 3機のうちの1機から撮影した広島のキ
ノコ雲。瀬戸の海と白い海岸線をみせる島々。この写真からは、被爆者の助け
を求める声は聞こえない。作戦を終えて帰途につく勝利者の目。あくまでも冷
静な目。



2003年3月22日