戦時の小説
戦時は、
歌も、小説も、新聞も、手紙も、そして会話も状況は似たようなものであったと思える。
以下
--昭和の戦時歌謡物語・塩沢実信著 展望社--
より転記する。
「麦と兵隊」の著者・火野葦平は戦後「当時、ペンに加えられていた制限は大きいものであった。」
火野葦平の言葉は、兵士や国民の士気を鼓舞することを目的とした軍歌・戦時歌謡にそのままあてはまるとみられる。
第一、日本軍が負けているところは書いてはならぬ。皇軍は忠勇義烈、勇敢無比であって、けっして負けたり退却しないのである。
次に、戦争の暗黒面を書いてはならない。強盗、強姦、掠奪、放火、傷害、その他。
第三に、戦っている敵は憎々しくいやらしく書かねばならぬ。味方はすべて立派で敵はすべて鬼畜でなければならない。
第四に、作戦の全貌を書くことを許さない。兵隊の狭い身辺の動きは書けても、作戦全貌は機密に属している。
第五に、部隊の編成と部隊名を書かせない。軍、師団、旅団、連隊、大隊、中隊、小隊、分隊となっているわけだが、全部部隊として表現しなければならない。
第六に、軍人の人間としての表現を許さない。分隊長以下はいくらか性格描写ができるが、小隊長以上は全部、人格高潔、沈着勇敢に書かねばならない。
第七に、女のことを書かせない。皇軍は女を見ても胸をドキドキさせてはいけないのである。
2015年11月24日 | 昭和16年~19年