玄海灘で


青島沖

船は進む海上の彼方へ彼方へ。
湾内に浮かぶ艦船も過ぎ、波を蹴る。

東方の青い半島には高き砲台が湾上を睨んでいるのが見える。高き日章旗が森林の中に聳えている。

青島を次第に遠のく。船は一路目的地へ、目的地へ。青き海上をすべって行く。
南風顔をなぜながら、希望に輝く若人達よ元気に。

1939年10月8日


六時三十分。全く大陸の姿は見えない。


黄海

薄き船上のもや、水平線の彼方より丸き太陽が出る。
船は突き進む。明日は玄海灘であろう。

海上に浮かぶクラゲ・魚群が目に入る。
船は一路東へ、東へと進む。
実に平静な波だ。
10月9日朝八時。黄海海上にて。


斎州島沖

洋上の彼方へ彼方へと白波を蹴り進む。
小さきうねり、船もかすかに動く。

水平線の彼方に島が目に映ずる。
朝鮮島だろう。

水魚がはなつ黒き海、清き漣のしぶき。

戦友の十八番の浪花節を聞く。


対馬沖を通過する

松だ。松だ。なつかしい。

家・丘の姿もなつかしい。見事だ。

青き山、白き灯台。
内地へ近づきつつあるのだ。


船は一路関門へ、関門へとつづく。

1939年10月10日 午後三時30分。対馬沖にて。