餅、餅は自分にとりては好物の味。
なつかしい我故郷にて食べた腹いっぱい餅の味は、別に格別だ。
めでたく入営軍隊に入って、母が面会に来てくれた時、いただいた餅、実になんたる味がする。
家にいる時には10銭20銭と買って、分けあって食べていたが、それとは天地の差だ。
思い出せば、出征の際父が、たくさん買っていただいた餅より、食った事が無く、話ばかりだ。
これも(作者記・生きていたこと)本日、充分なる食事ができたのも我が戦友たちと、本日まで世話になりつつきたのだ。
1938・9・27
2001年8月15日
作者記・敵との戦いよりも、毎日の飢えとの戦いの方が続く行軍中に夢見た父の話である。