鯨を撃つ人


少年時代、食べた肉といえば”鯨肉”、朝昼晩食卓に在った。

少年時代、日本の代表産業といえば石炭。

少年時代、乗り物といえば汽車。


捕鯨船団のうち小さな船に「キャッチャーボート」と呼ばれる鯨を射撃する船がある。

南氷洋上で鯨を捕獲するこの船の射撃手はヒーローだった。
少年雑誌のグラビアにカラーページで載っていた。


いっぽう石炭はといえば坑道の先端で石炭石を砕くひとがヒーローになってもよさそうなんだけだ、まったくなし。
映画「にあんちゃん」のように貧しい暮らしぶりがいやがられたのだろうか?

子供の画くものは今でも乗り物。僕の時代は絵を描く、ということは蒸気機関車の絵を描くことに近いほど、みんな汽車を描いていた。
こちらもまったくヒーローではなかった。
歌にある「運転手は君だ、車掌は僕だ・・」も、あくまで汽車でなく「電車」を前提にしている。
真夏でも大汗を吹く暇なく、石炭をスコップでくべまくる、あの姿が子供には敬遠されたんだろうな。


今これらの産業・職業は消えてしまった。


子供のヒーローになる職業とは。今も昔も・・・泥臭くなく、必要不必要・重要性・貴重性などに関係なく・・・決められているんだな。


2002年2月11日




茂平の子供