星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソン完走レポート



星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソン完走レポート
”野辺山を制するものは100kmマラソンを制する”といわれるこの大会。
数ある国内の100kmマラソンの中でも最も厳しいコースと言われている。それは、開催場所の地形からも容易に想像できるが
全国のウルトラマラソンに参戦しているベテランの方々が仰っているのだから、たぶんその通りなのだろう。
一方で、信州八ヶ岳周辺を走るコースの景観もこれまた日本有数といわれている。
自分は、昨年9月の村岡100kmで途中リタイアした程度の走力しかないのだが、この厳しいコースと素晴らしい景観を一度は
経験したいと思い、迷うことなく昨年11月に早々とエントリーしてしまった。
コースの標高差は1000m、制限時間は14時間。完走できるかどうか、できたとしても制限時間ぎりぎりしかないと思っていた。
でも、一ヶ月前のフルマラソンで自己ベストを出すなど調子は悪くないので、絶対完走するという強い意志で挑んだ。


■前日
前日、ではなく前々日の夜10時前に自宅を出発。車で行くか電車で行くか直前まで迷ったが、現地での移動や宿泊代等を考え、
体力的には少々ハードとも思ったが、今回は車を選択した。山陽道〜名神〜中央道経由で片道約650km。
途中休みながら車を走らせ、翌朝(土曜日朝)9時半ごろ諏訪ICに到着。
諏訪市内で散髪。その後、霧ヶ峰高原、白樺湖、蓼科高原をドライブし、午後3時ごろ会場入りした。
受付を済ませ、選手説明会を聞いた。24時間テレビの100kmマラソンでも有名な坂本雄次氏も心得等を話された。
坂本氏によれば、アップダウンのあるコースの方が、一か所に疲労が集中しないためかえって走りやすいという見方もできるとのこと。
でも1000mもの標高差にこの考えがどこまで通用するのか?という疑問も残ったが、少しは不安が消えた。前向きに考えよう。
その後、近くの温泉で汗を流し、ビールと食事を買い込み車中泊。夜9時前には寝た。


■当日(スタートまで)
午前3時起床。意外としっかり眠れた。車外に出て非常に寒いのにびっくり。
そういえば昨日の説明会でも、早朝の気温は5℃程度と低く東京の真冬並みなので、防寒をしっかりするようアドバイスがあった。
通常のウルトラでは長袖ランシャツ+ゴミ袋程度だが、今回はその下にもう1枚昨日購入したアンダーシャツを着込んだ。
迷ったのはシューズ。前半は未舗装路なのでトレイルシューズが望ましいとのアドバイスもあったががそんなものは持っていない。
42kmの着替えステーションにクッション性の高いシューズ(アスリートクラブで買ったサッカニー)を預け、それまでは最近フルで
履いているアシックスのジェネレーサーを選択した。
途中着替えられるのは、42km・59km・87kmのうち2か所。42kmと87kmを選択して、着替えやサプリメント、スプレー等を預けた。
そうこうしているうちにスタート時間が近づく。カウントダウンの後、いよいよ野辺山100kmがスタートした。


■スタート〜コース最高地点(約20km)
スタートしてしばらくは割と平坦な道が続く。最初の5km、スタートのロスを含めて31分37秒とまずまず。
スタート直後、後ろを向いて写真を撮っている人がいた。何かと振り返ってみると綺麗な綺麗な朝日。今日はい天気になりそうだ。
5km前後から微妙に登り始めた。このあたりで暑く感じてきたのでゴミ袋を脱いでポーチのベルトに挟んだ。
8km前後、少し曇っていてくっきりとはいかないが、正面に雄大な八ヶ岳連邦が見えてきた。
この後、あの中腹を走るのか思うと、ワクワクしてくる。9km前後からいよいよ未舗装道路に入る。
さらに進むと周囲を木々に囲まれた本格的な林道トレイルに入る。時折八ヶ岳連峰が見え隠れする中、ひたすら登る。
砂利がゴロゴロしていて非常に走りにくい。時々足をとられそうになりながら慎重に走る。
と、いきなり”コース最高地点(1908m)”の看板が見えた。えっ、もう、という感じ。あっけないほど簡単に最初の”やま”を登ってしまった。
正直、もう少し登りのトレイルを走りたかった。


■約20km〜八峰の湯(42km)
コース最高地点を過ぎると、しばらく下る。道路は未舗装のままだ。
下りは足への負担が大きい。飛ばしすぎると後半に響くため、慎重に下る。とはいっても下りなので、20km〜25kmは30分を切った。
いつのまにか道路が舗装道路に変わっている。
35kmの稲子湯に到着。ランナーはコース上3か所で温泉に入ることができる。
ここ稲子湯、42kmの八峰の湯(ヤッホーの湯)、71kmの滝見の湯の3か所だ。ここ稲子湯は最初の入浴可能場所になっているところ。
完走を目指すためには温泉に入っている時間はない。迷わず温泉には入らず再スタート。
下り基調のコースをさらに進むと、42kmの八峰の湯に到着。2ヵ所目の温泉であり、着替えステーションでもある。


■42km〜65km
八峰の湯で約10分休憩。当初はここでシューズを履き替える予定だったが、ここまで調子よく来ているのでこのまま行こうと決めた。
45km〜50kmは調子よく走れた。しかしこのあと59kmの着替えステーションまでの折り返しコースは非常につらかった。
足が全く動かなくなり、順位を大きく落とした感じ。50km〜60km間が今回最も長く感じた区間だ。
65kmを過ぎると登りがきつくなってきた。いよいよコース最大の難関馬越峠への登りが始まった。


■馬越峠(79km)
65km以降しばらくは、きついといってもそれほどでもない坂が続く。なーんだ、この程度か?これならにちなんの方がきついぞ!?
半信半疑で走り続けたが、やはりそんなに甘くはない。それまでは割と開けた片側一車線の道だったが、75km手前から急に木々に
囲まれた山の中に入っていった。登り勾配も急にきつくなった。噂の馬越峠が牙をむいて眼前に立ちはだかってきた。
でも自分のモチベーションは高く、気持ちが切れることはなかった。歩きの比率が多くなったのは仕方のないところだが、周囲には殆ど
走る人がいない中、時折走って急坂を登って行けた。峠の頂上までに相当数のランナーを抜いた。我ながらナイスファイト!!である。
なので、頂上にも以外と早くたどり着くことができた。ここまでくれば後はゴールまで下り基調のコースだ。
急な下りでは毎回膝通で苦労するが、いまのところその兆候もない。よーし!完走が見えてきた。
しかも自己ベスト(12時間49分)更新の可能性もある!そのためには、ゴールまでキロ7分が必要...ちょっときついか!?
でも、関門を気にする必要もなく、自己ベストを狙える位置にいる自分が嬉しかった。


■馬越峠(79km)〜ゴール
馬越峠を越えてからの下りは、しんどいながらも膝通の心配がなかったため、そこそこのペースで走ることが出来た。
しかし、下りが終わると、平地でも足が非常に重く感じた。ペースは上がらず、87kmの着替えステーションまでが非常に遠く感じた。
やっとの思いで87kmのエイドに到着。ここで食べた信州そばは最高においしかった。
10分ほど休憩して再出発。ペースはあまり上がらない。自己ベストは事実上無理!13時間切りも危うくなった。
残り5kmを過ぎ、記録への期待はあきらめたものの少しでも早くゴールしたいと思いで、最後の力を振り絞って走る。
ペースが徐々にあがり、次々と前のランナーを抜く。抜いた方から”ナイスファイト!”の声がかかる。残り3km、ますますペースが上がる。
次々とランナーを抜きながらゴールシーンを想像し始めた。ゴールでのポーズはこうしよう、ああしようとの思いが巡る。
ゴールの際、前後にはあまりランナーがいない方がいい。ゴールでは写真を撮ってくれるし、完走者紹介のアナウンスもしてくれるはずだ。
なので、他のランナーとできるだけかぶらないよう前の状況を見ながらペースを上げ下げして自分の位置を調整した。
ゴール30m手前、前にランナーはいない。自分を紹介してくれているアナウンスが聞こえた。そして、歓喜のゴール!!
この厳しい大会で完走。しかも制限時間に1時間近く余裕を持ってのゴール。本当に夢のようだ。


■感想
僕にとっては比較的好タイムで完走することができた。はたして本当に日本で一番厳しいコースなのか?という疑問がわいてきた。
あくまで個人的な感想だが、にちなんおろちの方が厳しいのではなかろうかと感じる。
確かに全体の標高差はにちなん600mに対して野辺山は1000mと比較にならないが、コースの厳しさは標高差だけでは語れない。
全体のコース構成は前半と後半に大きな峠越えがあるなど、非常に似ている。但し、野辺山はまだまだ元気な前半20kmで最初の峠を
越えるのに対し、にちなんは疲労がたまり始める38km前後から大きな峠越えが始まる。これは結構堪える。
後半の峠越えについても、坂の厳しさは似たり寄ったりだが、大きな違いがある。
野辺山は木々が日光を遮ってくれるるが、にちなんの場合は晴れると太陽の光をまともに受けるため、晴れた時の厳しさはにちなんが上。
大きな峠越え以外の箇所でも、全体を通したアップダウンの繰り返しはにちなんや村岡の方が厳しいかもしれない。
また、沿道の応援は少し残念だった。にちなんは、子供からお年寄りまで町を挙げて応援してくれる。まとまった集落では途切れることなく
大きな声援が続く。でも野辺山ではそれがあまり感じられなかった。応援があるにはあるが、町を挙げてという雰囲気にはほど遠い感じ。
なので、沿道の応援から力をもらう場面はにちなんや村岡に比べると少ない感じがした。
でも、いろいろ書いたけど、厳しいコースであることは違いない。また、前半の林道トレイルや八ヶ岳連邦のすばらしい景観を臨みながら
走るコース設定も大変魅力的でおもしろかった。選手案内等も適切でスタッフの対応も良かった。
近ければ毎年出たいと思うが、ここまで遠いと....今回が最初で最後になるかもしれない。





■時間経過
通過タイム 5kmラップタイム
5km 31分37秒 スタート〜5km 31分37秒
10km 1時間05分11秒 5〜10km 33分34秒
15km 1時間41分14秒 10〜15km 36分04秒
20km 2時間16分57秒 15〜20km 35分43秒
25km 2時間46分31秒 20〜25km 29分34秒
30km 3時間20分49秒 25〜30km 34分18秒
35km 3時間57分37秒 30〜35km 36分38秒
40km 4時間33分01秒 35〜40km 35分24秒
45km 5時間15分22秒 40〜45km 42分20秒
50km 5時間45分37秒 45〜50km 30分15秒
55km 6時間30分51秒 50〜55km 45分14秒
60km 7時間23分35秒 55〜60km 52分44秒
65km 8時間03分00秒 60〜65km 39分25秒
70km 8時間48分08秒 65〜70km 45分08秒
75km 9時間35分50秒 70〜75km 47分42秒
80km 10時間27分50秒 75〜80km 52分00秒
85km 11時間01分37秒 80〜85km 33分47秒
90km 11時間47分12秒 85〜90km 45分35秒
95km 12時間32分14秒 90〜95km 45分02秒
100km 13時間04分51秒 95〜ゴール 32分37秒




■記録集
http://www.r-wellness.com/archives/m-nobe100km/08result/08nobe-100m.pdf










2009年6月11日