乗客が機関車を押す話
井笠鉄道の車両は、乗客が降りて後押しした話はよく知られ現在でも体験者が多い。
しかし、機関士にとっては後押し不要の下りの方が難しかったようだ。
坂道を登るのが苦しいのは、花火の日、正月の帰省時などと思えるが
不思議に、
降りて歩いた、降りて押した、という乗客の体験談には「笑い話」が多く、
会社や機関車に対して「苦情」の話は聞いたことが無い。
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井笠鉄道「勾配に泣く」
「高梁川68号」の「」より転記
井笠鉄道には急坂が二ヵ所ある。くじばー大井村間の20/1000勾配と、大井村―小平井間の13.7/1000勾配である。
機関車はブレーキは手動、7〜8両の長大編成で手動制動機だけで列車を所定の位置に止める至難の業が求められた。
大井村→くじば間は最後尾に手動制動機のついた緩急車を連結。機関士からの警笛が3回あればブレーキをかけ、汽笛2回で緩めた。
上り勾配は更に大変。
駅の途中で車輪が空転、砂撒き装置はあったが間に合わず、機関助手も車掌も列車から降りて道床の砂をまいたものである。
時には駅にたどりつくことが出来ず、くじば駅まで引き返し再度の挑戦と苦闘の連続であった。
2015年12月05日 | 暮らし