夜の月

一日戦塵にまみれし身体を風呂にて流し。

露天風呂だ。
美しい月と星をながめつつ身体を流す。
一日の疲れも吹き飛んで気持ち良い。

僕等にとっても月は美しい、この月も故郷の山河に輝いているのだ。

内地の両親の求めで突進していくのだと思うと、なんだか懐かしい。

寂しい気持ちもさらっと忘れてくる。

戦友眠りにつく頃、俺の今の気持ちを伝えて暮れと一点の曇り無き空を見る。
懐かしい郷里の事がそろそろと、脳裏に浮かんでくる。


彼等もまた決して無心ではないではあろう。

幾千年の間、人類の過去、盛衰を彼等もみな知り尽くしている。


突然夜の静寂を貫く銃声は、敵奇襲かと銃を取り外を睨む。

月は輝く銃声に、月陰あわく人の波。
いざ来たれり、いざ撃たん。
吾等の腕は鉄血の、御国にささげたこの身体。

銃身の彼方に、ただこうこうと輝いている人の陰。
戦友たちの話し声。


きょろくにて(1939)6月27日夜11時

2001年8月15日


談・2001年8月15日

ドラム缶の中で風呂にしょうた。

下は熱いので下に板を敷いて入りょうた。
横も当たれば熱い。