宇品へ上陸



九時三十分より検問実施。

内地の土地。


重き足を引きずり、一歩一歩歩くとき、しみじみ戦友のことが思われる。亡き戦友のことが実に寂しい。
亡き戦友の事を思い感慨無量。さみしい限りなし。・凱旋に一目・・・・


作戦の為の一時帰還だろう。
しかし内地の土はなつかしい。

10月13日一時三十分。


いよいよ本邦の土を踏んだのだ。

午前八時、れんぱ船に乗る。

乗船して陸地に向かう。

一歩なつかしの土を踏みしめる。

実に感無量のものがある。

一歩一歩大地を踏みしめて宇品へ上陸、兵舎へ向かう。

間道は、女生徒・婦人会・格団体から歓呼して迎えられ。

しかし、として、ただただうなだれつつ答えるのみ。
何のしゃべることも、感激の涙もでない。

実にくやしい、口にはつくりえない感じだ。

ああ我は凱旋日だ、帰還だ、一時帰還だ。


10月13日午前9時。



談・2001年9月2日

「宇品からは船に変わりに外地出征する人がいた。それで一時帰還じゃろうと、思うとった。」