青島にて


建ち並ぶ西洋建築。

大国租界は青き緑風。

実に風景明媚な所だ。街道の緑樹は秋風になびき、戦地の跡も何物も認めず、ただ内地のような感じがした。


自動車にて病院へ行く。内地以上に設備は完備されている。国防婦人会、学校生徒のかいがいしい奉仕の姿に、病者たちも嬉々として全快におもむいていくだろう。

海岸に出る。○○艦の勇姿、青島湾を圧している。頼もしき限りなし。
日章旗等軍旗が海上にたなびき、躍進日本の姿が目に映ずる。わが国の威力が輝いているようだ。

米国兵の水兵の姿、じつにはでやか。ちょうど芝居に出る水兵のようだ。
その姿は輝き、人形のような感じがした。

大道を闊歩する外国人の姿、緑の街路樹に立ち並ぶ洋風の家に
一層の精気を増す。

薫り高き良き眺め、保養地としては第一番だろう。実に美しい。


初めて見る、また最後の眺めかもしれない。明日は出発の日だ。今宵が支邦大陸での最後の夜だ。

今は消灯のラッパが響いている。友も床につく。電灯も消える。

上陸以来一年六ヶ月。
過ぎた戦場の思い出が夢のようにほとばしる。

(1939)10月七日夜九時三十分。


談・2001年9月2日

チンタオはけっこうなとこじゃ。それじゃけい書いとるんじゃった。なんやかんや完備されとった。